夢の5インチゲージ運転

自分が初めて自分でコントロールできる5インチゲージの乗用模型に乗ったのは、今から20年前くらいになる「野辺山ポッポランド」での体験でした。当時、まだ幼かった息子を乗せて長い周回線路を運転させてもらったのが初めての運転でした。これまで鉄道模型は走行を見るものという認識であり、自分が乗って運転するということは考えてもおらず、風を感じて走った野辺山の5インチゲージには感動を覚えたものでした。それから何年もたった2018年にオークションで割と手ごろな値段で5インチゲージのバッテリーロコが出ていたので、思い切って購入しました。送られてきた段ボール箱は大変大きくて、5インチのバッテリーロコも大変大きな機関車でした。木で作られていて、さてどんな塗装にしようかと悩んでいたものです。とりあえず、自宅離れの前に約6メートル程の直線線路を敷いて前後の試運転をしていました。機関車だけだったので、知り合いから頂いた台車と簡易台車を購入して、運転席のあるトレーラーを自作しました。

我が家に5インチゲージがやってきました。

機関車の塗装はあれこれと迷いました。駅で見かけた黄色の移動車も良いし、軽便鉄道の機関車の色も魅力的です。結局、形から直ぐに連想できた新幹線の保守用ディーゼル機関車にすることにしました。色を合わせるために、新幹線の米原駅近くで保守用車両をよく見に行きました。どうやらMO-〇〇〇〇という形式であることがわかり、自分の機関車はMO-7とすることにしました。7とはラッキーセブンの7です。5インチゲージの機関車の塗装は、ダイナミックな作業でした。新聞紙とマスキングテープを使い黄色を塗ってから青を塗っていきました。レタリングシールで形式番号を付けて、窓枠をカットして白色プラバンでガラスを表現し、木でワイパーも付けました。トレーラーの方は大きな木材を切って枠を作り、初めは息子が中学生の時に技術家庭の授業で製作した椅子を載せていました。これはのちには座面を木材で製作して、椅子のクッションを付けています。だんだんと5インチゲージらしくなってきました。

塗色は新幹線の保守用車両をモチーフとしました。形式名はMO-7です。

車両が形になってくると6メートルの線路を行ったり来たりの運転ではつまらなくなってきました。やはり広々とした線路で走ってみたくなります。近所に5インチゲージが運転できる場所もなかなかありません。そんな時に、5インチゲージの台車を譲ってくれた知人から、5インチゲージの線路を譲ってもらえる話が来ました。残念な事に、後にこの知人は膵臓がんで亡くなってしまわれ、断捨離の意味でたまたま敦賀鉄道フェスティバルで知り合いになった私に線路を格安で譲ってくれたのだと思います。2019年7月27日に知人の住む大津市坂本まで線路を引き取りに行ってきました。全部でたったの3万円で譲ってもらえました。また線路と一緒に作りかけの機関車の上部とトレーラー用のボギー貨車トキ15000形式の上部をいただきました。軽トラで喜んで引き取りに行ったことを覚えています。正に「夢の荷物」でした。

今は亡き知人から譲り受けた5インチゲージの線路等。

幸いなことに自宅裏には畑があって、なんとかこの線路が敷けるスペースがありました。ずっとマルチをしたままだったので、その上から仮に敷設することにしました。畑なのでなかなか水平を取るのが難しく、その年の夏休みは早朝から畑を平らにしていく作業をしました。そしてなんとか8月半ばに5インチゲージをオーバルで敷設することが出来たのです。夢に向かっての汗だくの力作業は全く苦になりませんでした。

自宅裏の畑に開通した5インチ鉄道。
半径4.5メートルのオーバル線路を敷設しました。

連日にわたって早朝か夜に試運転を繰り返しました。やはり地面が平らになっていない区間では脱線してしまいます。木材で線路の下にスペーサーを入れたりしながら調整していきました。そしてようやく脱線せずに周回できるようになってきました。そうなってくると、もう1両人が乗れるトレーラー、客車を作りたくなりました。知人から頂いた貨車にボギー台車を2つ購入して取り付ける作業をしました。そして人が乗れるトレーラー、トキ15000形式が生まれました。自分だけの乗用鉄道の誕生に喜びを隠すことができず、何人か友人を呼んで乗ってもらったり、完成祝いの運転会を行ったりもしました。大きな夢の一つが叶ったように思いました。線路はいずれは下のベース部をコンクリート製にしていき、引き込み線も作りたいと考えています。 ※自宅裏の5インチゲージは2024年現在、諸事情で線路を撤去しております。

自分が乗って運転できるのが魅力の5インチゲージ。

その後、5インチゲージが運転できる場所をじっくり探していて、京都の亀岡市にある「保津川ライブスティームクラブ」にたどり着くことができ、2022年の4月に自分の5インチゲージバッテリーロコとトレーラー一式を軽トラに積み込んで運転に行くことが出来ました。ちょうど自分が退職した春のことで、仕事や時間を気にせずに遊びに行くことができました。そこでクラブの方々と知り合いになり、以後の5インチゲージのプライベートな運転会にも誘って頂けるようになりました。今年の5月に、京都の運転会で5インチゲージのライブスティームを運転させて頂くことが出来たのもクラブの方の紹介のお陰です。そしてこの9月17日から18日には富山県小矢部市の「クロスランドおやべ」で開催される5インチゲージのイベント、「ミニSLフェスタinおやべ」に初めて参加することになりました。また新たな出会いに胸を膨らませている今日この頃です。

2022年4月には亀岡市の「保津川ライブスティームクラブ」の線路を存分に走行できました。

自宅5インチゲージ運転展望動画